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憲法は則自然法人権擁護システム社会約した社会的契約


第四部 
  第1章


憲法は
 則自然法
 人権擁護システム社会
   約した社会的契約





     【要旨】


  憲法作って
  則法(自然法)人権擁護システム社会(国家)
  立ち上げるのが立憲主義の真意。
  立憲主義は人権擁護システムとての
  法律制度のバージョン。
  もう一つのバージョンに罪刑法定主義がある。
  日本国憲法は、社会的分業制度と暫定自由制度と
  法律制度と国家公務員制度の四つの人権擁護
  システムによって成り立っている。


 ――法律(法規)は
   人権(そのもの)擁する、資する方策・制度約す
   社会的契約。
   契約も
   人権(そのもの)擁する、資する方策約す当事者間契約。
   共に広い意味の法律であり、
   その合理性に相応した
   超法規社会規範性がある。
   法律(法規)、契約自体に超法規社会規範がある
   わけではない。
   超法規社会規範=法(自然法)に反する
   法律(法規)・契約は無効。
   憲法は法律(法規)・契約を作って
   人権(そのもの)を擁護していく社会(国家)
   約した社会的契約=最高法規なので、
   憲法に反するということは、事実上
   超法規社会規範=法(自然法)に反することを
   意味する。







     【目 次】



1 法律・契約を作って
  人権(そのもの)擁護していく社会
  約した社会的契約=最高法規=憲法




2 行政の目的
   法律制度・暫定自由制度による
   人権(そのもの)擁護




3 給付行政の目的
   損傷人権(そのもの)の事後補修回復で
   暫定自由制度の一環












1 法律・契約を作って
  人権(そのもの)擁護していく社会
  約した社会的契約=最高法規=憲法



法律は人権(そのもの)擁する、資するための方策・制度を
約する社会的契約。
契約も人権(そのもの)擁する、資するための方策を約する
当事者間契約。
したがって、現実売買では契約は作られない。
法律制度は法律・契約を作って人権(そのもの)を守って
いこうという人権(そのもの)擁護システム。
法律・契約はその合理性に相応した超法規社会規範性
がある。
規範性は、それを守らなかったら生きていけない、という
事実が持つ強制力に由来する。
公序良俗は法(自然法)=超法規社会規範の別称。
公共の福祉も法(自然法)=超法規社会規範ないしは
「社会一般のしあわせ」、すなわち「社会が則法(自然法)
人権(そのもの)擁護システム一元社会(国家)であること
のしあわせ」のことに違いない。
従人為法絶対自由資本主義人工市場似非社会上の権利
義務の一切は権利濫用として否定されている(民法1条
3項参照)のは、そのためだろう。


憲法は法律・契約を作って人権(そのもの)を擁護していく
社会(国家)約した社会的契約=最高法規なのである。
内容は、
人権(そのもの)擁護システムである社会的分業制度と
法律制度と暫定自由制度と国家公務員制度で成り立って
いる。
中核を成すのは、社会的分業制度と暫定自由制度だ。
暫定自由制度は、
@人権(そのもの)を守るための事前方策(規制)は
必要最低限にとどめ、
A取りあえずは自由(暫定自由)とすることによって
人々の健康で文化的な生活の進歩向上を促し、
Bそれ故の人権侵害阻害損傷による社会(国家)の
歪みは、
C刑罰や公共事業制度や帰属所得再評価不当利得
返還制度としての累進課税制度と一体の社会保障制度
などの社会補修復元制度を以て
事後的に補修復元することとした
自然法に則った人権(そのもの)擁護システム。


憲法は法律・契約を作って
人権(そのもの)を擁護していく社会(国家)約した社会的契約
=最高法規なので、
憲法に反するということは、事実上
超法規社会規範=法(自然法)に反することを意味する。
憲法81条が規定する法令等の合憲性審査制度の意義は
そこにある。


図L―暫定自由制度(人権擁護システム)




図M―法規(法律)も契約も
   法律制度=人権擁護システムの一環としてある



図M―法規(法律)も契約も
   法律制度=人権擁護システムの一環としてある

【法律(法規)と契約】

       

則自然法暫定自由制度人権擁護システ
ム社会(国家)約した社会的合意=最高
    法規=憲法

人権を擁し資し進歩向上を促すための
方策・制度を予め約す社会的合意(契
   約)=法規(法律)

当該行為に係る人権を擁し資し進歩向
上を促すための方策・制度を予め約す
   当事者間合意=契約
法律(法規)を補完するものとして法律
  制度の一環としてある契約

【法律制度=人権擁護システム】

法律(法規)を作るのを専務とする国会を置き予め法律(法規)を作らせ、
それを実施するのを専務とする内閣を置いてそれを実施させ、
起きてしまった個別の人権侵害阻害は裁判所にフォローさせること
によって、人権擁護を全うさせるとともに人権の進歩向上に寄与せしめる
システムが、法律制度である。



図N―5つの制度で成る人権擁護システム
図N―5つの制度で成る人権擁護システム








2 
行政の目的
   法律制度・暫定自由制度による
   人権(そのもの)擁護



(1)
経済学が行っているのは、
幻覚国家絶対自由資本主義人工市場似非社会化倒錯
犯罪である。
だが、行政が、実際に行っているのは、
法律制度と暫定自由制度という人権(そのもの)擁護シス
テムを使っての人権(そのもの)擁護である。
「自由主義・私的自治の原則」など幻覚でしかない。
当然、その修正として理解されている「修正資本主義」も
幻覚でしかない。
だが、「修正資本主義」が人権(そのもの)擁護システムで
ある暫定自由制度の誤解だろうことは、容易に察しがつく。
人権(そのもの)は、社会が、全ての人が他者と共に健康で
文化的な生活を営むべく自由に生きていく
則法(自然法)人権(そのもの)擁護システム社会(国家)である
ことによって擁護されている。
人権(そのもの)擁護システムは法律制度と暫定自由制度が
一体となって成り立っている。
中原茂樹教授は、
「基本行政法第2版」(日本評論社)10頁以下で、
「行政活動やそれを規律する行政法の仕組みについて、
具体的なイメージをもってもらうために、5つの設例を挙げる。」
【設例A】 鉄道運賃・料金の規制―公共料金の適正確保
【設例B】 自動車の運転免許制度―交通事故の防止
【設例C】 ストーカー行為の規制―ストーカー被害の防止
【設例D】 生活保護:給付行政の例―健康で文化的な最低
                限度の生活保障
【設例E】 環境保護のための補助金:給付行政の例
                    ―太陽光発電の普及促進
行政が実際に行っているのが、
法律制度と暫定自由制度を使っての人権(そのもの)擁護
であることは、中原茂樹教授が掲げるこれらの設例を見ただけでも
分かる。


図L―3―行政の目的
    法律制度・暫定自由制度による人権擁護
図L−3―行政の目的法律制度・暫定自由制度による人権擁護




(2)
中原茂樹教授曰く。
「1 鉄道運賃・料金の規制
【設例A】
(1) 鉄道会社と利用者との法律関係に関して、仮に私的自治の
 原則(契約自由の原則)を貫くとすると、鉄道運賃はどのようにして
 決まると考えられるか。
(2) 実際には、鉄道運賃(の上限)に関しては国土交通大臣の
 認可が必要とされている(鉄道事業法16条1項)。
 なぜだと考えられるか。
(3) 運賃ではなく料金(特急料金など)の規制については、
 どのような仕組みがとられているか、参照条文を見て、説明せよ。
 また、その理由も考えてみてほしい。
 ・・・・
◆鉄道事業法◆
(目的)
第1条 この法律は、鉄道事業等の運営を適正かつ合理的なもの
 とすることにより、運送の安全を確保し、鉄道等の利用者の利益を
 保護するとともに、鉄道事業等の健全な発達を図り、もって公共の
 福祉を増進することを目的とする。
(旅客の運賃及び料金)
第16条 鉄道運送事業者は、旅客の運賃及び国土交通省令で
 定める旅客の料金(以下「旅客運賃等」という。)の上限を定め、
 国土交通大臣の認可を受けなければならない。これを変更しよう
 とするときも、同様とする。
2 国土交通大臣は、前項の認可をしようとするときは、能率的な
 経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超え
 ないものであるかどうかを審査して、これをしなければならない。
3 鉄道運送事業者は、第1項の認可を受けた旅客運賃等の上限
 の範囲内で旅客運賃等を定め、あらかじめ、その旨を国土交通
 大臣に届け出なければならない。これを変更しようとするときも、
 同様とする。
4 鉄道運送事業者は、特別車両料金その他の客車の特別な設備
 の利用についての料金その他の国土交通省令で定める旅客の
 料金を定めるときは、あらかじめ、その旨を国土交通大臣に届け
 出なければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
5 国土交通大臣は、第3項の旅客運賃等又は前項の旅客の料金
 が次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、当該鉄道運送
 事業者に対し、期限を定めてその旅客運賃等又は旅客の料金を
 変更すべきことを命ずることができる。
 一 特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするものであるとき。
 二 他の鉄道運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれが
  あるものであるとき。
・・・・・
◆鉄道事業法施行規則(国土交通省令)◆
(旅客運賃等の上限の認可申請)
第32条 法第16条第1項の国土交通省令で定める旅客の料金・・
 (・・・)であって、新幹線鉄道に係るものとする。
2〜4 略
(旅客の料金の届出)
第34条 法第16条第4項の特別車両料金その他の客車の特別な
 設備の利用についての料金その他の国土交通省令で定める旅客の
 料金は、次のとおりとする。
 一 特別車両料金、寝台料金その他の客車の特別な設備の利用に
  ついての料金
 二 特別急行料金等であって、第32条第1項に定めるもの以外のもの
 三 座席指定料金その他の座席の確保に係る料金
2 略

(1) 設例A(1)(2)――契約自由の原則と行政規制の必要性
私的自治の原則(契約自由の原則)からすれば、運送契約の内容たる
運賃については、鉄道会社と利用者の交渉に委ねられるはずである。
しかし、実際には、鉄道会社と個々の利用者が、利用のつど、運賃に
ついて交渉することは、お互いにとってコストがかかりすぎ、現実的で
はない。
そこで、鉄道会社が約款で運賃について規定し、利用者はそれを
納得すれば利用し(運送契約を締結し)、納得しなければ利用しない
という形がとられる。
この場合、利用者には、約款の内容を受け入れるか利用をやめるか
の二者択一しかないことになる。
さらに、鉄道は地域独占性が高いため、利用しないという選択肢をとる
ことは実際上困難である(利用者は約款の内容を受け入れざるを
えない)場合が多いと考えられる。
そこで、約款に定める運賃の上限を公益の代表者である行政機関が
チェックして、認可するという仕組みがとられている。
(2) 設例A(3)――行政規制の多様な手法
運賃ではなく料金(特急料金など)については、規制緩和が行われ、
認可制ではなく届出制、すなわち、鉄道会社が料金を決定し、国土
交通大臣に届け出ることとされている(鉄道事業法16条4項)。
ただし、一定の場合には国土交通大臣は料金の変更を命じることが
できる(同法16条5項)。
その理由は、特急料金等については、運賃に比べて、利用者に選択の
余地がある(特急料金が高すぎる場合には、普通電車を利用すること
ができる)ため、鉄道会社の創意工夫によって、多様なサービスの提供
と料金設定がなされることに期待したものと考えられる。
ただし、新幹線の特急料金については、鉄道事業法16条第1項・同法
施行規則32条第1項により、上限認可制がとられている。
新幹線については上述のような考え方が妥当しないからだと思われる。
・・・・
このように、行政機関によるチェックには、許可や認可のように、事前に
チェックしてお墨付きを与えるという方法だけではなく、届け出制によって、
まずは行政機関に情報を集めておき、問題があれば事後的に改め
させるという方法もある・・・・。
規制緩和の流れの中で、後者の方法が増えてきている。
色々なチェックの仕組みがありうることに注意してほしい・・・・。」
(中原茂樹
「基本行政法第2版」(日本評論社)10頁以下)、と。





(3)
人権(そのもの)とは、人が社会(国家)の中で、他者と共に、
健康で文化的な生活を営むべく自由に生きていく超法規的権利(義務)
である。
人権(そのもの)は人間が則自然法人権(そのもの)擁護システム社会
(国家)に生まれながらにして持っている超法規的権利(義務)だ。
鉄道運賃・料金規制も、自動車の運転規制も、ストーカー行為の規制も、
みな人権(そのもの)を守るための規制だ。
人権(そのもの)を守るための必要最低限の事前規制は、
必要最低限事前規制→暫定自由→事後補修復元の暫定自由制度
(人権(そのもの)擁護システム)の一環としてある。
人権(そのもの)擁護システムたる暫定自由制度は、法規(法律)・約款・
契約を作って人権(そのもの)を擁護していく法律制度と一体となって
存在している。
法規(法律)は、
人権(そのもの)を守るための方策・制度を約する社会的契約だ。
契約(約款)は、
人権(そのもの)を守るための方策を約する当事者間契約だ。
共に広い意味の法律だ。
これは、そもそも「私的自治の原則(契約自由の原則)」が幻覚
でしかないことを意味している。


鉄道は人権(そのもの)のインフラである。
全ての人が公平に利用しうるためには、「約款に定める運賃を」
人権(そのもの)擁護を専務とする社会(国家)の機関である
「行政機関がチェックして、認可するという仕組みが」妥当な
方策だと考えられる。
鉄道事業法16条第1項で旅客運賃等の上限認可制を定めて
いるのはそのためだろう。
「運賃ではなく料金(特急料金など)については、・・・・認可制では
なく、届出制」がとられているのは、インフラとしての重要性が
相対的に低い結果だろう。
そして「鉄道会社が約款で運賃について規定し、」その運賃を
支払い利用していく。
それは、決して、「鉄道会社と個々の利用者が、利用のつど、
運賃について交渉することは、お互いにとってコストがかかりすぎ、
現実的ではない。」、という問題ではないだろう。


鉄道事業法は、「・・・・もって公共の福祉を増進することを目的と
する。」、とある。
公共の福祉、すなわち「社会一般のしあわせ」とは、
社会が、
全ての人が他者と共に健康で文化的な生活を営むべく自由に
生きていく、
則法(自然法)暫定自由制度人権(そのもの)擁護システム一元
社会(国家)であることのしあわせのことだ、
と考えられてくる。
ちなみに、公共の福祉という言葉は、憲法(12条、13条、
22条1項、29条2項)の他にも、民法(1条1項)や河川法
(1条)、道路法(1条)、都市計画法(1条)、建築基準法(1条)など
にある。
道路法1条は、「この法律は、道路網の整備を図るため、道路
に関して、路線の指定及び認定、管理、構造、保全、費用の
負担区分等に関する事項を定め、もって交通の発達に寄与し、
公共の福祉を増進することを目的とする。」と規定している。
都市計画法1条は、「この法律は、都市計画の内容及びその
決定手続、都市計画制限、都市計画事業その他都市計画
に関し必要な事項を定めることにより、都市の健全な発展と
秩序ある整備を図り、もって国土の均衡ある発展と公共の福祉
の増進に寄与することを目的とする。」と規定している。
建築基準法1条は、「この法律は、建築物の敷地、構造、設備
及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資すること
を目的とする。」と規定している。
憲法13条は、「すべて国民は、個人として尊重される。
生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、
公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、
最大の尊重を必要とする。」と規定している。
「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」というのは
人権(そのもの)のことであり、そして、それは、社会が、
全ての人が他者と共に健康で文化的な生活を営むべく自由に
生きていく、
則法(自然法)暫定自由制度人権(そのもの)擁護システム一元
社会(国家)であることによって保障される、ということなのでは
ないだろうか。





(4)
中原茂樹教授曰く。
「2 自動車の運転免許制度
【設例B】
(1) 自動車および原動機付自転車を運転しようとする者は、
 都道府県公安委員会の免許を受けなければならないとされ
 ており(道路交通法84条)、免許を受けないで運転した者は
 処罰される(同法117条の2の2第1号)。
 この制度の趣旨は何か(仮にこの制度がなかったとすると、
 どのような問題が生じうるか)。
 また、自転車については運転免許制度がとられていないのは
 なぜか。
(2) 免許を受けた者が自動車等の運転に関し道路交通法(また
 は同法に基づく政省令、同法に基づく処分)に違反したときは、
 公安委員会は、免許を取り消し、または効力を停止できると
 されている(道路交通法103条1項5号)。
 なぜだと考えられるか。
 ・・・・
◆道路交通法◆
(運転免許)
第84条 自動車及び原動機付自転車(以下「自動車等」という。)
 を運転しようとする者は、公安委員会の運転免許(以下「免許」
 という。)を受けなければならない。
2〜5 略
(免許の取り消し、停止等)
第103条 免許(・・・・)を受けた者が次の各号のいずれかに該当
 することとなったときは、・・・・公安委員会は、政令で定める基準
 に従い、その者の免許を取り消し、又は6月を超えない範囲内で
 期間を定めて免許の効力を停止することができる。
 (ただ書略)
 ―〜四 略
 五 自動車等の運転に関しこの法律若しくはこの法律に基づく命令
  の規定又はこの法律の規定に基づく処分に違反したとき(・・・・。)。
・・・・
(1) 設例B(1)――事前規制たる行政法の特色(民事法・刑事法と
 の比較)
自動車の運転によって事故を起こせば、損害賠償という民事責任や、
自動車運転死傷処罰法による刑事責任を問われることから、仮に
運転免許制度がなくても、運転に習熟していない者が公道を運転する
おそれはない、という考え方もありうる。
しかし、世の中には慎重な性格の人もいれば楽観的な人もいるので、
自分だけは大丈夫と考えて、軽率に運転する人が出てこないとも限ら
ない。
そして、ひとたび死亡事故が起きれば、たとえ後から損害賠償や処罰が
なされても、死亡した被害者は2度と戻ってこない。
自動車の危険性に鑑みると、やはり行政が事前にチェックする仕組み
は必要と考えられる。
このように、自動車の運転免許は、民事法および刑事法による事後的
な対応のみでは不十分であるとして、「行政による事前チェックの仕組
みがとられている典型例ということができる(阿部・解釈学T4頁参照)。
これに対し、自転車については、自動車や原動機付自転車ほど危険
ではないため、法的には民事責任や刑事責任に委ねられており、
免許という事前チェックの仕組みはとられていない。
(2)  設例B(2)――行政行為の撤回
免許の取消しは、行政法の学問上の用語では「行政行為の撤回」に
当たる・・・。
その機能ないし目的については、義務違反に対する制裁であると
いう考え方(芝池・総論講義177頁)と、(義務違反に対して非難し、
懲らしめるという意味での)制裁ではなく、義務違反者を当該免許制
から排除する(あるいは、排除するという制度を整えて、義務違反を
抑止し、適法性を確保して秩序維持に奉仕する)ものであるという
考え方(塩野・行政法T177頁、小早川・行政法上245頁。なお、
宇賀・概説T263頁も参照)がある。」
(中原茂樹
「基本行政法第2版」(日本評論社)15頁以下)、と。





(5)
自動車は人権(そのもの)のインフラである。
同時に、人権(そのもの)を侵害する危険性も大きい。
「行政が事前にチェックする仕組み」が、自動車の運転
免許制度が、必要なのは間違いない。
だが、人権(そのもの)を守るための必要最低限の事前
規制は、必要最低限事前規制→暫定自由→事後補修
復元の暫定自由制度(人権(そのもの)擁護システム)の
一環としてある。
人権(そのもの)擁護システムたる暫定自由制度は、法規
(法律)・約款・契約を作って人権(そのもの)を擁護していく
法律制度と一体となって
存在している。
日本の今の憲法は、戦後の日本社会(国家)は、
法律制度と暫定自由制度を使って人権(そのもの)を擁護
する人権(そのもの)擁護システムとして存在している。
人権(そのもの)擁護を専務とする社会(国家)の機関である
行政機関が、実際に行っているのは、
当然のことながら、法律制度暫定自由制度を使っての人権
(そのもの)擁護である。


だが、「修正資本主義」社会と誤解してきた従来の法律学は、
「鉄道運賃の認可、自動車の運転免許、つきまとい等の禁止
命令および生活保護の決定は、いずれも行政行為の例である。」
(中原茂樹「基本行政法第2版」日本評論社81頁)、と
観念してきた。
「行政行為(行政処分)とは、「公権力の主体たる国または公共団体
が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を
形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められている
もの」である。」
(中原茂樹「基本行政法第2版」日本評論社81頁)、という。
「国や公共団体は、国民と契約を結び、あるいは行政指導によって
行政を行っている。
しかし、行政の活動には国民の同意を待っていたり、国民の希望に
従っていたのでは、目的を達成できないものも多い。
そこで、そうした場合に備え、法は、行政庁が、相手方である国民の
意思いかんにかかわらず、一方的に国民に義務を課したり、その他
国民の法的地位を決定することのできる権能を認めている。
たとえば、道路や公園を作るには、地主と契約を結んでその建設用地
を購入し、施設を建設すればよいが、必要な土地を地主がどうしても
売ってくれない場合には、公共の利益を実現するために土地を強制的
に買収する必要がある。
このために認められるのが、土地収用の手続である。
また、違法建築物の除去、有害な食品の販売停止、公害発生施設の
操業停止など危険な行為の取締りのための措置は、行政庁の一方的
な判断に基づいて国民に命令する形をとらなければ効果があがらない。
税金を課すのも同様である。
そらに、給付行政上の措置であっても、生活保護の支給、福祉施設へ
の入所、道路や公園の占有許可などは、たいてい国民の申請を契機に
して、行政庁が必要性を審査し、一方的な判断によってその許否を決定
するしくみがとられている。
このように、行政上の法律関係においては、法律が行政庁に一方的な
決定権限が与えていることが多い。
それが、むしろ常態である。
そこで、これまでの行政法学は、行政庁が法律上命令者として行動し、
一方的に国民の権利義務を個別具体的に決定する行為を「行政行為」
ないし「行政処分」と呼び、その特徴の研究を重要なテーマとしてきた。」
(原田尚彦「プレップ行政法第二版」弘文堂89頁以下)、という。


「税金を課す」のは勿論、全てが、法律制度と暫定自由制度
という人権(そのもの)擁護システムを使っての人権(そのもの)
擁護行為として存在しうる。
しからざるものとしては、違法(自然法)だ。
法(自然法)は、全ての人が、社会(国家)の中で、他者と共に、
健康で文化的な生活を営むべく自由に生きていくべし、とする
超法規社会規範だ。
行政行為の真意は、
人権(そのもの)擁護を専務とする社会(国家)の機関が、
法律制度と暫定自由制度という人権(そのもの)擁護システムを
使ってする人権(そのもの)擁護行為にある、
と考えられて来る。








3 
給付行政の目的
   損傷人権(そのもの)の事後補修回復で
   暫定自由制度の一環



(1)
中原茂樹教授曰く。
「4 生活保護:給付行政の例
  ――憲法上の権利の実現、法律上の制度
  
【設例D】
国民の自由に対する行政の仕方という観点から見た場合、
生活保護法に基づく生活保護行政には、鉄道運賃の認可
(【設例A】・・・)、運転免許(【設例B】・・・)およびストーカー
行為の規制(【設例C】・・・)と比べて、どのような特徴がある
か。

◆生活保護法◆
(この法律の目的)
第1条 この法律は、日本国憲法第25条に規定する理念に
 基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その
 困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の
 生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的
 とする。
(保護の補足性)
第4条 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、
 能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持
 のために活用することを要件として行われる。
2・3 略
(申請保護の原則)
第7条 保護は、要保護者、その扶養義務者又はその他の
 同居の親族の申請に基いて開始するものとする。但し、
 要保護者が急迫した状況にあるときは、保護の申請が
 なくても、必要な保護を行うことができる。
(実施機関)
第19条 都道府県知事、市長及び社会福祉法(・・・)に規定
 する福祉に関する事務所(以下「福祉事務所」という。)を
 管理する町村長は、次に掲げる者に対して、この法律に
 定めるところにより、保護を決定し、かつ、実施しなければ
 ならない。
 一 その管理に属する福祉事務所の所管区域内に居住地
   を有する要保護者
 二 居住地がないか、又は明らかでない要保護者であって、
   その管理に属する福祉事務所の所管区域内に現在地
   を有するもの
2・3 略
4 前3項の規定により保護を行うべき者(以下「保護の実施
 機関」という。)は、保護の決定及び実施に関する事務の全部
 又は一部を、その管理に属する行政庁に限り、委任すること
 ができる。
5〜7 略
(申請による保護の開始及び変更)
第24条 保護の開始を申請する者は、厚生労働省令で定める
 ところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を保護の実施
 機関に提出しなければならない。ただし、当該申請書を作成
 することができない特別の事情があるときは、この限りでは
 ない。
 一 要保護者の氏名及び住所又は居所
 二 略
 三 保護を受けようとする理由
 四 要保護者の資産及び収入の状況(生業若しくは就労又は
   求職活動の状況、扶養義務者の扶養の状況及び他の法律
   に定めめる扶助の状況を含む。以下同じ。)
 五 略
2 略
3 保護の実施機関は、保護の開始の申請があったときは、保護の
 要否、種類、程度及び方法を決定し、申請者に対して書面をもって、
 これを通知しなければならない。
4〜10 略
(職権による保護の開始及び変更)
第25条 保護の実施機関は、要保護者が急迫した状況にあるとき
 は、すみやかに、職権をもって保護の種類、程度及び方法を決定し、
 保護を開始しなければならない。
2・3 略

【設例A】から【設例C】までは、契約の締結、自転車の運転、人と
の付き合いといった私人の権利・自由を、行政機関が制限すること
によって、不当な値上げ、交通事故、ストーカー被害等の望ましく
ない事態が起こるのをあらかじめ防ごうとするものである。
このように、私人の権利・自由を制限することを通じてその目的を
達成する行政活動を規制行政という。
これに対し、【設例D】は、私人に対して金銭、物品、サービス等を
給付するもので、給付行政の一種である。
道路、市民会館、学校等の施設を提供するのも給付行政に
当たる。
もともと行政法の課題は、行政による不当な介入から国民を守る
ため、行政活動を法によって縛るところにあったので、規制行政が
考察対象として重視された。
これに対し、給付行政においては、国民は行政からお金やサー
ビスをもらえるのであるから、ありがたい話であって、法によって
縛るという必要性はあまり感じられなかったと思われる。
しかし、福祉国家の下で給付行政の役割が増大すると、税金の
使い道に関することなのだから、行政機関の自由に委ねるべき
ではないのではないか、さらに、民間ではなく行政がサービスを
提供することが本当に必要なのか、等々の問題意識が出てくる。
現行行政法においては、給付行政は規制行政と並ぶ重要な関心
分野である。
給付行政にも様々なものがあるが、【設例D】の生活保護は、
生存権という憲法上の権利を実現するために、法律に基づいて
行われるものであり、法律による規律や保護を受ける人の権利
保護等が強く要請されると考えられる。・・・・

5 環境保護のための補助金:給付行政の例
  ――政策目標の実現、法律に基づかない制度

【設例E】
住宅への太陽光発電設備の設置について、国および多くの地方
公共団体が、設置費用の一部を補助している。
このような個人の資産となる設備への公金の投入は、いかなる
理由で正当化されるか。
また、特定の設備の設置に対して国や地方公共団体が補助する
ことは、個人のライフスタイルの選択やメーカーの生産活動に対
する介入となり、自由主義・私的自治の原則に反しないか。

これも給付行政の例であるが、【設例D】の生活保護のように、
憲法上の権利を実現するために法律に基づいて行われているもの
ではなく、政策目標(本設例では、環境保護のための太陽光発電
設備の普及促進)を実現するために、必ずしも法律に基づかずに
行われている行政活動の例である。
このように、給付行政の分野では、必ずしも法律に基づかずに、
行政機関が自ら政策目標を設定し、実現のための施策を行うことが
よくある。
環境保護のような場合を考えると、このような行政活動は必要で
あると考えられるが、設例の問いにあるような問題意識からは、
これを完全に行政機関の自由に委ねるのではなく、何らかの
法的コントロールを及ぼすべきではないかが問題となる。」
(中原茂樹
「基本行政法第2版」日本評論社21頁以下)、と。





(2)
生活保護は、
健康で文化的な最低限度の生活がままならなくなった人に、
「その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低
限度の生活の維持のために活用することを要件」として行われ
るものである。
健康で文化的な最低限度の生活がままならなくなったとき、
人権(そのもの)が損傷されたとき、
その損傷人権(そのもの)の事後補修回復作業として行われる
のが、生活保護・給付行政だ。
給付行政の目的は、損傷人権(そのもの)の事後補修回復で
ある、と考えられてくる。
そして、それは人権(そのもの)擁護システムとしての暫定自由
制度の一環なのである。
そもそも、行政の目的は、法律制度・暫定自由制度による人権
(そのもの)擁護であり、それは、規制行政でも、給付行政でも、
同じなのである。
「私人の権利・自由を規制することを通じてその目的達成する
行政活動」が規制行政なのではない。
規制行政は、人権(そのもの)を侵害阻害損傷することが予め
判然としている事柄を事前に規制することによって、人権(その
もの)を擁護する作業なのである。
規制行政と給付行政との間には、人権(そのもの)の事前保護か
事後救済保護か、の違いしかない。
その間には、暫定自由権という本舞台が大きく横たわっている。
この暫定自由権は生存権が裏打ちされている。
「福祉国家」の真意は、
全ての人が、社会(国家)の中で、他者と共に、健康で文化的な
生活を営むべく自由に生きていく、
則法(自然法)人権(そのもの)擁護システム社会(国家)である、
と考えられてくる。


図K―則自然法
   人権擁護システム社会(国家)原理図